3月の釣り



   ■ 糠平湖(五の沢)

3月4日 国立公園内で楽しめるワカサギ釣りも今週が最後である。最近の釣果は不明だったが、昨シーズンは気が付
いた時には終了していたので、今シーズンは悔いが残らぬようにとこの日の釣行をずうっと前から決めていたのであっ
た。
出発時も雪は降っておらずコンビニに寄ってから、いざ糠平!と思ってたところ国道は片側通行の除雪中で出鼻をくじ
かれた・・・。しかし、道は走りやすくて思っていたよりも順調に走り、大雪湖ではマイナス13℃のところもあればマイナス
21℃にも下がっているという気温差に驚きつつも三国峠越えも済んで、薄明るくなった頃には除雪ステーションに到着
することができた。
  
除雪ステーション内の展示ブースには除雪車の模型も展示されている
5分後には五の沢駐車場に着いていたが、意外に車の数は少なくて少々気が抜けた感もあった。しかし、この頃から
続々と到着する人たちで駐車場も賑わいを見せていた。
いつもの林を抜けて湖面の広がりが見えたとき、2週間前とは全く様子が変わっていたことに驚かされてしまった・・・水位が想像以上に下がっていて、場所によっては大きな氷の板が急角度の坂をつくり上げていたので、注意しながらソリを引かなければならなかった。
沢の流れ込みが近い釣り場は人の数も少なくなっていて、反対に湖の中央部は早くも沢山のテントが立っていた。
積雪は相変わらず少なかったが、ソリの道を外れると足がとられて歩きにくく体力の消耗は激しくなるので、目的の場所近辺までは固くなっているソリの道を沖まで進んだ。
前回のポイントよりも少し深そうな場所で試し釣りをするためにテントを広げてソリごと中に入れ、今回は私が仕掛けを下ろしてみた。
深さは5mほどしかなくて水位の低下がここでもはっきりとわかるほどだったが、すぐにアタリがあり11cmほどの良い型
のワカサギが釣れたので「よし、ここにしよう!」と妻が言った。
テントの中とはいえマイナス16℃は久しぶりの寒さだったので、すぐにワカサギは凍ってしまっていた。
準備が整って本格的に釣り始めると妻は快調にワカサギを次々と釣っていたが、私は始めからウグイが釣れてしまっ
た・・・。その後もどういう訳だか私には10匹に1匹ほどの割合でウグイが釣れて、ひどい時には連続で3匹釣れたことも
あった。

五の沢河口方面
どうやら私の穴はウグイの棲家があるとしか思えず、それでも引き味だけは良いので楽しむことにした。
この日はワカサギの魚影が濃くて、仕掛けが底に着く間もなくアタリがあったので、随分と楽しく過ごしている妻の姿に安心していたが、何故か妻の釣るワカサギは型が良いのに私は小さなワカサギばかりだった。
予想していたほど太陽が顔を出すことは少なく、二人きりなので寒さも感じられたので2台のストーブで暖まりながら釣っていると、湖の中央部を目指して歩く人たちの足音が頻繁に聞こえてきて、糠平湖の氷上釣りも明日で終ってしまうという実感がわいてきた。
10時前に外へ出てみると中央部付近は40張、入口の浅瀬は30張ほどのテントが見えていたので、朝と比べるとその後随分とたくさんの人が来たことがわかった。


湖中央部付近
家族連れも多いようで、子供の歓声も多く聞こえてきていた。水位の低下によって現れる切り株に残された氷と雪が大
きなきのこのような形となって氷上にポツリと残されているのもこの湖の名物で、背景のすり鉢状の山々とテント群、そ
して青空が実に美しい。
 

昼近くなってもワカサギの食いは良く、妻は型の良いワカサギばかりを釣り、私も小さいワカサギとウグイを快調に釣っ
ていると、スノーモービルの音もなく料金の徴収係の人が声を掛けてきた。今回はいつもの人と違っていたが優しそうな
話し方の人で、少しだけお話をした。
午後からもさほど釣果は落ちずに楽しむことができたが、14時過ぎには雪が降り始めて風も少しだけ出てきて気温が
下がり始めたので、この頃から帰る人たちの足音や声が聞こえてきていた。

        

私は「あと5匹釣ったらやめる」の宣言どおりに最後の一匹を釣り上げて片付けを始めたとき、この日釣ったウグイは
軽く50匹を超えていた・・・・・私の釣り経験においてこんなに沢山のウグイを釣ったのはもちろん初めてである。そして妻
も竿を置いてこの日の釣りが終ったのが15時過ぎだった。結局、今シーズンの糠平湖では一番の釣果となった。
テントを畳んだとき、すぐ隣にいた人が釣果を聞いてきたので教えると「そんなに釣れましたか!」そう言って驚いてい
たが、私達の場所とは5mも離れていなかった。
丁度その時、ソリを引いてやってきた親子連れの二人が同じく私達の釣果を聞いて「この場所を使わせてください・・・」快く場所を譲ってから、私の場所はウグイポイントだということも教えておく。
そして、その親子は湖の入口付近の氷の板が崩れ落ちてしまったせいで迂回路ができていることを教えてくれた。
この時間からやってくる人は夜を徹して釣ると聞いたが、事故のないようにゴミを持ち帰るように願いたいものである。というのは、夜釣りの人たちによるゴミの不法投棄が多いらしく、東大
雪自然ガイドセンターのホームページにもマナーの悪さが指摘されていて、翌年度から夜釣り禁止の措置がとられない
か心配でもある。
中央部はまだまだ沢山のテントが張られていたが、入口付近は釣果が悪かったのか、すでにテントの数は一桁を切っ
てしまっていた。教えていただいた迂回路付近には確かに崩れた氷の板があり、朝の急勾配の道はすっかり姿を変え
てしまっていた。
急激な水位の低下は帰り道を登りばかりが続く難所に変えてしまい、ソリを引きながらの登坂ともいえる縦走に何度も
何度も休憩を挟みながら、後ろから来る人たちに「イヤー、帰りは大変だー!」と皆同じことを言われながら抜き去られ
ていた。
ようやく車にたどり着き、休憩してから片付けをして出発したが、調子が戻るには20分ほど時間を要してしまった。三国
峠までは雪が降っていたが、層雲峡を過ぎると雪は止んで路面も出ていたので意外に早く自宅に戻ることができた。





   ■ 網走湖(呼人)

3月10日 久しぶりの網走湖での釣行に少しだけいつもより楽しみにしていたのは、この時期に期待できる子持ちの、
それもチカと見間違えるような型の良いワカサギが釣れると聞いていたからであった。
19時過ぎに出発し、日中は全道的に晴れだったためにほとんどの道が乾いた路面で走りやすく、月夜の下は薄っすら
と周りの景色も見えるほどの明るさだった。
網走市内で買物を済ませて呼人湖畔に着いたが、誰もいないだろうと思っていたために、意外にも車中泊していた車
が1台いたのを発見したのはホッとした気分だった。ぼんやりとした月明かりの下で見た湖面には、当然のことながら
誰もおらず、久しぶりに車内で燗酒などを楽しんだ後で寝ることにする。
灯りを消してテレビを観ているときに数台の車が駐車場に入って来たようだったが、夜釣りに向かったのかどうかは途
中で眠ってしまったので定かではなかった。


3月11日 目覚しは5時にセットしていたが、4時半には車やソリを引く音で目が覚めてしまった。しばらくの間、車内で
まどろんでいるうちに5時になったので、妻を起こし準備を始めた。



この時間になると外は薄明るくなっていて、湖上には4張のテントがランタンを点けて釣りをしているようで、テントに映
った影が手ばね竿の動きをしていた。駐車場にはすでに10台ほどの車が停まっていた。
5時半過ぎにはソリを引いて出発したものの、どのポイントにしようか迷っていた状態だったので、すっかり明るくなって
いた周囲のビデオ撮影をしたり、迷いながらゆっくりとした速さで湖上を歩いていた。
結局、この日の釣りはほどほどに釣果があればそれで満足という気持ちが強かったので、管理棟から近い場所で試し
釣りをすることにした。アイスドリルで30cmほど掘ったところでキッシーさんから電話・・・「情報では中島の淵が良さそ
う・・・」とのことだったが、仕掛けを下ろすとすぐにほどほどの型のワカサギが立て続けに3匹釣れてしまったことで、駐
車場から近いこの場所に決定!
風が強かったのでテントを張るのに少し手惑いながらも、ソリッドステークでテントを固定して風の対策も適当に済ませて座ったのだが・・・・・暑い!早朝でも0℃という気温は、体を動かした後のテント内では大げさかもしれないが暑いのである。
アイスドリルの刃が切れなくなっていたのか、穴あけにはいつもより時間がかかってしまったが、一番大変な作業も終わりようやくにしてイスに座った。
テントの中でも寒いと言う妻の為にストーブに点火、私はTシャツ1枚の半袖姿となったところにキッシーさんから電話が入った。
湖面の入口に居るようなのだが、私達のテントが見えないという・・・私は「心のきれいな人にしか私達のテントは見えな
い」などと裸の王様の一節を引用したギャグを飛ばしながら外へ出て、こちらからは見えるキッシーさんに手を振って居
場所を教えた。実はコールマンから小川のノースガード9に買い換えていたことを知らせていなかったので、彼には

石油ストーブまである
見えないテントとなっていたのであった。
キッシーさんが、まだ釣りの準備を始めたばかりの6時40分過ぎのことだった・・・近くにソリを引いているには大きすぎる重低音とエンジン音が近づいてきて、再び遠くなって行った。すかさず外を見ると軽自動車がゆっくりと通り過ぎた音だったのだが、ここ網走湖で氷上に車を乗り入れている人を見たのは初めてのことで、もちろん入口にロープが張ってあり乗り入れは禁止されていた。
氷の厚さからしても割れることはないにしても、場所によっては危険だしルール違反なのだが、朝のこの一件は「ソリを忘れたんだよね!」私達はこの一言で済ませた。
その車は、荷物を降ろすと車を駐車場に戻していたようだったので、ひとま
ず安心した。
さて、ようやく準備が整ったキッシーさんがアイスドリルを回し始めたのであるが、50cmほど掘り進んだところでそこから
先に進まなくなってしまったのである。
どうしたことか力を入れても変化はなく、とうとうその穴は諦めてその横で再びドリルを回し始めた。
しかし、次の穴は僅か10cmのところで止まった・・・氷の層にあたっていたのだが何故かそれが削れずに進まないのである。とうとう3箇所目の穴をその横に掘り始めることになり、キッシーさんはすでにヘトヘトだが穴がなくては釣りにならないので「300円払ってあけてもらおうかな?」などと言いながらも、なんとか貫通することができたのが7時過ぎだった。
ドリルの刃を調べてみると刃先は反り返り所々欠けていたので、これでは氷を削るのは無理だとわかった。使用2年目のドリルだが、毎週色々なフィールドでの酷使に耐えられなくなったのだろう、来シーズンは交換しなくてはならないようだ。
次の事件は私に襲いかかってきた。氷の壁に根掛かりしてしまい、

この時期になると深い!
専用の「根掛かり簡単外し器」を使ってすぐに外れる予定が簡単にはいかない・・・穴を覗いてみると、何と!40cmほど
下の氷の層に木綿の手袋が埋まって、その一部がはみ出していたのである。捨て置かれたものか忘れていったものか
わからないが、甚(はなは)だ迷惑で厄介な位置に指の部分だけが飛び出しているものだから、片手を凍りそうな冷た
い水の中に入れてはさみで切り取ろうとしたが、完全には取り切れず諦めることになった。この手袋のせいで、巻き上
げには常に注意が必要な神経の休まらない釣りとなってしまったのである。

私の穴に放流中・・・

熱心に撮影していた
それから、一息ついて仕掛けを下ろしたキッシーさんの一匹目にカワガレイが釣れてきたのだが、それが何とも可愛いミニカレイであった。
そして次は妻の竿が折れんばかりに曲がり、穴から出てきたのは17cmほどのウグイだった。
外道好きのキッシーさんが、ポーズを注文しながら数枚写真を撮っていたことは言うまでもないが、どうもこの日は全てのことがいつ
もと調子が違う、としか考えられない妙な空気が流れていた気がする。しかし、釣れてくるワカサギだけは違っていて、
この時期の大型の抱卵した重量感のある釣り味の良い魚が半分以上を占めていた。12cmを超えるワカサギがダブル
でヒットすると、これがなかなか重くて引きも良いので楽しいものである。
8時40分頃、スノーモービルの音かして釣魚料金の徴収係がやってきた時、キッシーさんは自作自演の「自分の釣りの様子を自分でビデオ撮影する」という難しい技に挑戦していた。針掛かりさせた魚を引き上げるときにカメラをしっかりと穴に向けたままに引き上げなければならず高度な集中力が必要だったが、ワカサギを外すのは私が手伝った。
少しの間は快調に釣れていたのだが、しばらくするとワカサギも数が少なくなり食い渋りも出始め、確実に針がかりしているはずと思って引き上げても逃げられていることも多かった。
時々陽が射しているのかテント内の温度は暑いくらいに上昇し、外に出ると氷上の雪が解けて所々に水溜りができていた。時々エンジンドリルの音が聞こえてきていたので、観光客かどうかは定かではないが賑やかな声も聞こ

大型ばかりだ!
えてきていて、網走湖も最後かなと思える雰囲気さえ感じられた。
10時過ぎには一旦車に戻り、竿を持って管理棟の前でビデオ撮影をしていたところ、アルバイトの高校生風の少年が
「遊漁料金の支払いは済んでいますか?」と聞いてきたので「済んでいる」と答えたのだが、再びやってきて「領収書を
見せてください」と言う・・・もちろん素直に領収書を見せて納得させたが、管理棟の係員がその少年に言わせていること
が見て取れたことが少しだけ不愉快だった。しかし、まあこれくらい厳重にしてもいいだろう!
10時半頃メガ弟さんが到着、予想していた通りに釣り道具は一切持たずに来たようで、テント内ではさっそく持参のイスに腰掛けてくつろいでいた。全員が揃ってさらに賑やかなテント内となり、釣りやキャンプの話で盛り上がっていたが、肝心のワカサギは釣れていたとは言えない状態だった。
この時点ですでに3人が釣っていたカワガレイの数はいつもより多く、特に妻は型の良いカワガレイをこの日だけで10枚くらい釣っていた。
外の風は相変わらず強く、頑強な小川キャンパルのテントも動きはしないが膨らむほどであった。テントの縁に載せておいた雪は暖気に
より解けてしまいペグの力だけで固定されている状態だが、不安はほとんど感じられないほど信頼出来て、このテント
にして良かったとしみじみ思っていた。
食料とイスだけを持ってきたメガ弟さんがピノを食べた後、私たちが昼食にと用意していたレトルトカレーを食べ終わっ
た頃には帰ろうとしていたが、「もう少し・・・」とキッシーさんに引き止められるままに、その後も何度か帰ろうとしていた
ものの最後まで付き合ってしまうことになるのであった。

  
        大きくて幅広                         野釣りの人も多かった
昼近くなりワカサギの食いが悪くなると、私にばかり釣れていたので「イヤーとっちさん上手になったねえ!」などとキッ
シーさんにお褒めの言葉を頂いていたことに納得できない妻は「その場所が釣れるんだ!」と言うので、さっそく場所交
代。しかし、場所を変えても私に多く釣れてきてしまい妻の面子は潰れたかにみえたとき、「じゃあ仕掛けを交代しよ
う!」ということになった。果たして結果は・・・・・私の釣果は仕掛けのせいだったのである。
この日自宅に戻ってからじっくりと他の仕掛けと比べてわかったのだが、なるほどこの仕掛けなら釣れるだろうと考えられる明らかな違いが認められた。ただ、場所や時間帯など様々な条件下で試してみなければわからないが、充分に期待できそうだ。
キッシーさんは、いつもの名人らしからぬ釣果だったのはエサのせいもあったようで、前日に購入したにもかかわらずエサがほとんど動いていないような古いエサだったようで、この釣りにおいて鮮度は大事だということが見て取れた。
そしてついに、キッシーさんは自分が食べていた魚肉ソーセージをエサにしてしまうのであるが、ワカサギばかりではなくカワガレイまでも魚肉ソーセージには反応せず、弱ったサシかエサの付いていない
針の方に魚は食いついていたようである。
外道フェチと言われるさすがのキッシーさんも、頻繁に釣れるカワガレイには辟易して私の穴に放流していたが、どうい
う訳かキッシーさんに多くカレイが釣れていて、みんなが期待して待っていたトゲウオは一匹も姿を見せなかった。
15時過ぎに外へ出てみると周囲の所々に水溜りができていて、雪がある場所でもほとんどが水に浸ってしまっていた。
妻の仕掛けが絡まり使い物にならなくなった時点で、私の竿を妻に渡して私は納竿した。大振りの抱卵ワカサギを充分
に確保したので満足だった。



16時前に片付けを始め、駐車場に戻ってからしばらく談笑をして、次回の釣行の約束をしてから解散した。網走湖内で
アザラシが現れたという結氷していない場所を探してはみたものの、その姿を見つけることはできなかった。
遠軽町に近づいた頃から雨が降り始め、久しぶりに登代里での夕食に寄ってみたが珍しく客が少なかった。その後雨
は止み、高規格道路も快適に走って自宅に着いたのは20時前だった。
今シーズン最後の網走湖は予想以上に型が良く、最大15cmもあった。釣果の期待薄だった呼人会場にしては大漁と
言ってもよいほどの釣りとなった。

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