10月の釣り Vol.1


10月は私にとってアキアジ中盤戦であり、例年一番釣れる時期でもあるから力も入る。
ここまで大きく妻には水をあけられて瀕死の状態といった感の私ではあるが、そろそろ
神様が微笑んでくれても良い頃だと信じて網走に向かうことにする。

  ■ 網走港(第四埠頭)

10月3日 いつものように19時の出発少し前に師匠より電話があり、帽子岩は波が高く厳しい状況だと連絡が入っ
た。途中のサロマ休憩ポイントから師匠に電話をするが、帽子岩は諦めて第四埠頭に移動という決断がされていた。
降り続いていた雨も網走は止んでいて、帽子岩に行ってみようかとも思ったが面倒くさかったのでそのまま第四埠頭へ
向かった。第五埠頭側から入っていくと第四埠頭の右端近くに車1台分のスペースが空いていたので即断で決った。
右となりで場所を確保する為に置いてあったものが「パイプイス」だったのが少し気になったが、自分の前にも竿立てを
置いて釣り場を決めた。妻も気に入っているポイントだったので何の文句もなく車中泊の準備をしていると、師匠から中
央部付近に空きがあるのでどうかということで、誠にありがたい話ではあったが丁重にお断りしてしまった。
帽子岩ならば釣れる気がしていたが、翌日のここでの釣りには期待薄と決めつけて何となくではあるがのんびりとした
釣りを楽しみたいと考えながら眠りに付いた。


10月4日 少し遅めの4時15分の目覚ましだった。正面の知床連山は雲に覆われていたがそれ以外の空は雲がほと
んどなく、早く夜が明けそうな気配だったので慌てて準備を始めた。外へ出ると左となりのおじさんが丁寧な方で、私を
含め周囲の人たちに朝の挨拶をして回っていた。右へ2台目はフンベで知り合ったいつも来ているキャンピングカーの
清さんだったので楽しい釣りが出来そうな予感がした。
5時にはキャスティングを開始したが時々釣れる程度で、近いところでは左数人目ではマスが釣れてしまった。時々目の前をはぐれサケやマスのグループが通り過ぎるのを無視しながらキャスティングを続けていると、清さんにヒット!上がってきたサケは皆に「黒いな!お化けだ!」などと言われ、それほどひどいブナではなかったが「誰かいる人?」の問いかけに皆無視するので、清さんはリリースしていた。
この時に発した清さんの、こんなせりふが大流行することになった。それは「アキアジ釣り簡単だから、投げて巻くだけ!ガンガンくるから!」言葉の強弱は伝えられないがこれが大ウケだった。
「ガンガンくるから!」「簡単だ!」この言葉を釣れた人が言うと大笑いとなり、その場を盛り上げていくことになった。そして、この清さんが釣り場を離れると周りが釣れ始めるという現象も頻繁に起こって
いた。
右となりの会議室にあるようなパイプイスの人は、いつも止別河口中心だという方で、冗談ばかり言っている面白い人
だった。しかし、腕は確かでブナのオスばかりだったが5本も釣ったし、餌を交換する度に海中で動きをチェックする念
の入れようであった。 
清さんは2本目に少し銀がかったサケが釣れたのでキープして、サケ釣りをやめてチカ釣りを始めてしまった。撒き餌をしながら「みんな大人なんだからサー、後先考えて釣りしないとー」清さんが冗談交じりに言う。確かにもうこの時期になると、自宅はもちろん近所でもサケは満杯状態になるので、持ち帰りようがなくなる場合も充分ありえるということだ。
楽しい雰囲気の中、小爆釣状態(但し、釣れるポイントは決っていて、すべての場所がまんべんなく釣れていた訳ではない)が長く続いていたが自分の竿にはアタリはなく、一度だけ強いアタリのキュウリが釣れただけだった。しかも、ビーズの穴が大きかったのかウキ止めをすり抜けてしまっており、10m以上の深場を流していたようだった。予備のウキセットに交換しても同じビーズだったので仕掛けを作り直したが、これが裏目に出てしまうことになってしまった。
やっとアタリがあって最高のタイミングで合わせたが、直した継ぎ目から切れてしまいルアーだけ失ってしまった。慌て
て結んだので締め込みが甘かったのである。
そんなドジを踏んでいるところにレガオさんがやって来て、今朝は久しぶりに1本釣って帰るところだという。うらやまし
いなあと思いながらも、連続バラシ脱出を自分のことのように喜んだ。
10時17分、鈍いアタリとともにしばらく我慢してからウキが沈んでいったので、ここぞというタイミングで合わせを2回入れると乗ったようだった。重さは感じたが素直に寄ってきていたのでメスかな?そんな期待感も働いていて幸福な時間を楽しんでいると、清さんが大きなラケットの自分のタモ網ですばやく入れてくれた。
72cm・3.7kgの太っているが少し縞の入ったメスであった。
今度こそバラシ地獄から脱出した気分でホッとしていたところで一言「簡単だ!ガンガンくるから!」やっと釣って本当にうれしかった。
左となりの丁寧な話し方のおじさんのタモ入れをしただけだったが、その方がお昼過ぎに帰る時には何度もお礼を言わ
れ感謝されてしまい恐縮してしまった。今時珍しく腰の低い方だった。それに対してというのは変な表現だが、右隣の方
は天真爛漫というかにぎやかな人だった。釣れた魚はそのまま外に置いてあるクーラーボックスに入れるので、しばらく
の間バタバタ・ゴトゴトと音がして動いていたり、釣った魚は自宅に持ち帰ると嫌な顔をされるので知合いの家の玄関に
勝手に置いてくる(玄関にぶん投げてくるんダー)など面白い話が沢山あった。
その方によると止別は聞きしに勝る恐ろしい釣り場で、河口には50cm間隔でウキルアーマンが並び、その後方からはヒッカケじいさんも時々投げてくる。更に側面から飛んでくるヒッカケ針に注意しながら掛かったサケはゴボウ抜きで上げなければラインは切れてしまうので、止別だけは太いものを使わねばならないらしい。喧嘩は当たり前の世界で密漁の逮捕者が出るのはよくあることだが、なぜか高い罰金を払っても翌日にはまた密漁に来ているそうだ。
河口にある高いコンクリートの上からヒッカケ針を投げるが、ここを「お立ち台」と呼んでいて最高の密漁ポイントとなるが、ここで上げたサケを後方に置いておき、しばらくほったらかしにしておいて気が付くと魚が減っているらしく、これを持ち帰る人もいるらしい。普通に釣っ

アキアジ大漁、沈みそう・・
ている人でも置いておいたサケのメスだけ無くなっていたということはよくあることらしい。「止別恐るべし」である。
大君のこともよく知っていたので彼のうわさをしていると、案の定彼が現れたが釣りはせずに話だけをしていた。今シー
ズンはすでに180本以上釣っているので、あのステラは早くも壊れており修理中だという。私なら5年以上は楽に使え
るのに・・・。
10時35分、いきなりガツンというマスのような強いアタリにウキがスポッと沈んで合わせたのが2本目だった。
素晴らしいファイト中に銀ピカの魚体が見えていたので逃してはならないと、座ってファイト中だったが立ち上がって対応した。
今回も清さんがすっぽりと掬ってくれてネットインした。69cm・3.4kgの小ぶりなオスだったがきれいな魚体だった。ここでまた「ガンガン来るゥ!簡単だ〜!」そう言って皆と笑いあった。

帽子岩へ移動した師匠から連絡が入るが、波が高く厳しい釣りになっているらしく、まだ1本しか釣っていないという。自
分達は第四に可能性を感じ、帽子岩も釣り場がないということでそのまま続ける事にした。目の前を通るサケ定置網漁
船は沈みそうなくらいにサケを積んで何度も往復して第五埠頭端にある市場に運んでいた。市場では大きな海水が入
った容器に移されて行き先を待っていた。それにしてもすごい数のサケであった。今年は異常なほど豊漁が続いてお
り、漁組の冷凍庫が満杯になったとかすでに定置網を外してしまった漁業者もいるなど、色々な情報が流れているが真
実は定かではない。しかし、もしもそれが本当の話であれば釣り師にとってはうれしい事で、今後まだまだ釣れる状態
が続く事になるのではないだろうか?
11時25分、長い時間アタリがあったがガブリとは食いついてくれなくてドキドキしながらリールを巻いていると、目の前15メートルくらいまで近づいてからやっと手応えが変った。しっかり2回強いアワセを入れて乗ったが重く走って行く。いつものサケの重さとは違う感覚だった。妻が「少し待っててねー」と自分のリールを巻き取りタモ入れの準備をしてくれた。
やっと近づけることはできたが抵抗してタモには寄ってくれなかったので、バレないようにと願いながらサケを誘導していた。数回寄せてやっとタモに入ったが「重くて上げられない!」妻がそう言ったので自分が持ち上げてみたが、やはり重かった。
83cm・5.3kgはここ3年間で私としては最高の大きさである。魚体もきれいな銀ピカに大満足で「簡単だ!」そう言って
また、みんなと笑いあった。

アキアジの水揚げ
ただ、アタリも少ない妻は二度バラシがあって先週の好調とは裏腹の自分とは対照的な状態に喜んでばかりはいられなかった。午前中の興奮状態は昼食後にすっかり消沈してしまい、午後からは時々どこかで釣れたか?そんなだらけたというかのんびりした、天気と同様の釣り場に変ってしまった。暖かいが気温は10度台なので太陽が雲に隠れると寒くなるのが10月らしいところだった。
午後からはヒットして寄せる途中にバラシが一度あったが、不安要素を感じるものなどはなかった。帽子岩から自宅に戻ったという師匠からも連絡が入って、帽子岩は良い結果が出なかったそうだ。私たちも17時過ぎには片付けを済ませて、オスの2本を宅配仕様に加工してからヤマト運輸に向かった。

簡保の宿の温泉で魚の匂いもすっかり消えて温まり、釣り場に戻ると、清さんが私たちの釣り場もクーラーボックスで守
っていてくれた。感謝!これからカジカ釣りをするというのはさすがに釣りバカであり、体力もあるなあと感心してしまっ
た。私たちは夕食を食べながらお酒を楽しみ、21時には寝てしまった。


10月5日 3時前にお腹の具合で目が覚めそのまま起きてしまった。今朝も良い天気で早くに夜が明けるだろうと思っ
た。この日の右となりはフンベの常連の佐さんで、彼も饒舌な話の面白い方である。彼らの使用している道具は高級品
ばかりで竿が8万6千円だったとか、リールはステラかトーナメントを数台持っているという羨ましい人たちばかりであっ
た。左となりはというと、この日もおとなしい礼儀正しいおじさんだった。車で10分の近所に住んでいるそうだ。この日は
このおじさんの釣った2本のタモ入れを夫婦でしてあげることにもなった。もちろん、この方も帰りがけには丁寧にお礼
の言葉を残して帰った。
朝の1本目は佐さんの少し黒いサケで始まった。昨日は朝マズメに1本も釣れなかったので、何とか朝のうちに1本釣っておきたかった。アタリは何度か感じていたので釣れそうな気配は充分あった。
6時25分、重くないアタリがあってから、ウキが沈み引っ張られるのを感じたのでアワセを入れた。少し軽めの手応えではあったが何度も走る元気なサケで、見えた魚体は完璧な銀ピカだと思った。右となりのおじさんがお返しにと自分のタモを持って挑戦してくれたが、柄が柔らかすぎてなかな入ってくれなくて冷や冷やしたがなんとかネットイン!68cm・2.8kgの小さなメスだった。ようやく朝に釣れて気分も最高だった。
この日は海水がきれい過ぎて魚が時々見えるのが残念だった。
私の右の佐さんや清さんのグループはこだわりの釣りグループだったので、特に魚が見える時は「釣り場が荒れる」と
いって好ましくないという話もしていた。私も同感であり、見える魚を追ってしまう釣りは楽しさが半減してしまうと思うし、
ついつい見えるとそこにキャストしてしまうのが人間の性(さが)だと思う。佐さんにヒットしたが、隣で近くを巻いていた
人に絡んだ様子だった。佐さんが巻き、それに合わせるようにして隣の人も巻いていたがサケは全く抵抗なく足元まで
寄ってきた。タモの準備をしている間も刺さった針にぶら下がり全く動かないので「死んだんじゃないか?」とか「アワセ
強すぎて気を失ってしまったんだろう!」とか「佐さんアワセ強いから顎が外れてショックで動かなくなったんでないの!」
という周囲の言葉の中で、タモに入った瞬間に思い出したように暴れだした。このサケは口と臀鰭(しりびれ)に針掛か
りしていたので催眠術状態だったのだろう。なかなか珍しい出来事だった。妻以外の皆が「あーそこそこ行ったー!」と
騒いでいる中、何の事だときょろきょろしている妻の足元まで巻いてきた仕掛けの横をサケが通り過ぎようとしていた。
「あー食った!・・・・・・あー!」そんな皆の声とともに一瞬食ったが離してしまっていて、妻もアタリは感じた時に初めて
自分の事だったことを知ったそうで、少し残念がっていた。
     

私はというと、今シーズンから変えた6号のリーダーを信頼しすぎていて、昨日のそのままの仕掛けを使っていたので、
合わせ切れしてしまい、またしてもルアーだけ持っていかれてしまった。
日中になるとアタリは頻繁にあるが食いが甘くすぐに離してしまうようで、しっかり食わせるのが難しかった。
隣の佐さんにヒットしたが、そうと分かる数秒前には私にもアタリがあって、佐さんのヒットの3秒後には私にもヒットし
た!ダブルヒットかと思った次の数秒後には佐さんバレてしまい、すぐに妻を飛ばして隣の方がヒットした。しかし、私の
サケは10秒も楽しんだだろうか?バレてしまった。
その後、私と佐さんの間3mにもう一人入れてあげて狭くなったが、近い距離で会話を楽しめるのが良かった。
昨日よりも陽射しが強くて背中とお腹のカイロもはがしてしまうほどだった。イスに座って続けていたが、頭がボーっとし
て集中力がなくなっていることに気付いたのは、自分のウキが浮いたり沈んだりしているのをボーっと見ていた時だっ
た。ハッとした時はすでに遅かったのだ、サケは何処かへ行ってしまっていた。11時には片付け始めてお昼前に納竿
したが、師匠は帽子岩で7本釣って早々と帰宅していた。やっぱり今日は帽子岩だったか?そんな事を感じつつ、自宅
には17時頃着いてパソコンを開くと、キッシーさんとリンさんが5・4本と釣っており、その釣った場所が23日の私が入
ったポイントだったという。しかも、記念に「とっちポイント」と名付けたそうであった。うーん、釣りってなかなかうまく行か
ないものだなとつくづく感じつつ、釣れたときの感激があるから楽しいのだと釣れて当たり前の密漁のことをふと思い出
した。





  ■ 帽子岩

10月10日 いつもよりは30分近く早い出発だったので、三連休となる週末の場所の確保には少しだけ気が楽であっ
たが、混雑して駐車場内には泊められないだろうと覚悟していた。
途中、レガオさんから連絡が入り場所は任せておけとのことで釣り場確保の不安は吹き飛んだ。しかし、すぐにキッシ
ーさんからも電話があり早くも混雑していると、再び不安がよみがえってくるものだった。まあ、道中心配してもなるよう
にしかならないと開き直り、マイペースですべてを良き仲間達に任せることにして爆釣のことだけ考えて走っていた。確
かな情報では水曜日に網走のキムさんが46本というサケを持ち帰ったというすごい話も聞こえてきていたので、釣果
よりも帽子岩からどうやって持ち帰ったのか?の方が気になってしまった。
駐車場に到着したが満車だったので、そこから少し離れた道路沿いの空きスペースに停め準備をしていると、入口近く
の良い場所が空いたことを聞きすぐに移動した。キッシーさんの隣に停められたので、私の車との間で酒盛りの仲間に
入れてもらうことになった。キッシーさん、レガオさんと満月の明かりの下で呑む酒は格別で、時間の経つのも忘れるほ
どだった。11時半には司さんも到着して5人となったが、妻はすでに寝てしまっていた。
司さんの差し入れの肉まんが空腹のキッシーさんのお腹を満たし、酔ってつまみの漬物を落としたレガオさんを責めて
いたキッシーさんも機嫌が直ったようだった。4人で明日の大漁を語り合って楽しんでいたが、満月が雲に隠され予想
外の雨が少しだけ降り始めてきた。私の作戦はバラシがほとんどないキッシーさんの調子を狂わせるのには、二日酔
いしかないだろうと考えていた。レガオさんは酒が強いことは分かっていたし、調子を狂わせる必要もなくバラシを見せ
てくれるだろうと思い、早々と「バラシキング」の証であるステッカーを彼の車に勝手に貼っておいたが、意外にそのステ
ッカーは彼のお気に入りとなってしまった。12時にはなぜか正気に戻ったキッシーさんの音頭で解散、各自車に戻っ
た。


10月11日 いつもの高笑いとともにキッシーさんが釣り上げるというイヤーな夢にうなされ目覚めは悪かったが、なん
とか3時に起きることができた。というよりはトイレに行きたくて寝ていることができなかっただけだった。
こんなに早くからとは思ったが、やはり釣り場はたくさんの人たちで賑わっていたが、最初から密漁目的の場所取りをし
ている人も多く、通り道を塞ぐ迷惑な人たちでもあった。
奥まで進んでからレガオさんに教えてもらった場所を探し、本当にここなのだろうかと不安を感じつつも準備を済ませた
ところにレガオさんと司さんが現れた。先々週に隣だった旭川の方も近くだったので再会を喜び合う事もできた。 
信じられない数の密猟者が川へのキャスティングをしていた。 
キッシーさんも現れたが二日酔いのせいか少しふらついている様子もあって、作戦は成功したかのようにみえていた。
空も天気予報とは裏腹に雲が厚く空を覆い朝日はほんの一瞬しか拝む事ができなかった。
薄明るくなって妻も珍しく早くに到着し、ほぼ全員がキャスティングをしていたが、ほとんど釣れない状態が続いた。前日までの爆釣状態を信じてやってきた人がほとんどだったので、騙されているような気分だっただろう。
結局朝マズメは数本上がったのをやっと確認できた程度で終
了してしまった。
私たちよりも少し奥に入っていたチカさんに「8時から釣れるよ」そう言われて希望を捨てずにがんばることにした。その
後、お昼から来るという予定だった師匠がもう少ししたらここに着くという話を聞いた。その8時前には師匠も到着し、な
ぜか空いていたカーブ手前付近に入って、更にチカさんたちもそこへ移動してキッシーさん達の隣となった。師匠やチカ
さんたちが移動してすぐに4・5本立て続けに釣ってキッシーさんたちが唖然としていたが、実にタイミングが良かったよ
うだった。
密猟者が並ぶ危険な通路を通り駐車場に戻って用を済ませ釣り場へ帰ってみると、釣り場は一転してあちこちで釣れ
ていた。妻にもヒットしたのだが、ラインが切れてしまったようだった。チャンスを逃した私も妻の仕掛けをセットしてから
キャスティングを始めると、アタリはあったので釣れそうな気配を感じていた。
8時15分目の前すぐのところで軽いアタリを感じたので「食え!」そう心の中で叫んでみるとぐっとウキが沈んだ。少し早いかと思ったが近すぎてぎりぎりの状態に合わせると何とか乗ったようだった。先週から不調の妻はまたしても私にヒットしたものだから「自分で入れな!」。冷たく言われてしまった私は一人寂しくタモ入れをすることにした。銀ピカではあったが小さなサケで、もの足りない気はしたがすぐにネットインした。65cm・2.7kgのオスだったが、とりあえずボウズはなくなって一安心。
この後札幌に用のあるレガオさんは後ろ髪を引かれながら釣り場を去った。
9時01分、またしても3分の2ほど巻いてきたところでアタリがあった。良いタイミングで2回合わせしっかり乗った様
子、今日は行けるぞと気分良く魚の引きを楽しんでいたが、次の瞬間ルアーが自分の方に飛んできてしまった。
手応えが良かっただけに残念な1本だった。しかし妻の隣にいた司さんが丁度良いところをリーリングしていたので、そのサケかどうかは分からないがヒットした。
見えた魚体は銀ピカのメスで、司さん自分でネットイン!
うれしそうな司さんの笑顔が印象的で、見に行った妻に写真を撮ってもらっていたので私も一緒に祝福して喜びを分ち合った。
10時過ぎには少し離れたキッシーさんに再びヒットしたが、いつもの熱笑花

天界君主
沢高校の悪役天界君主のような高笑いが釣り場全体に「フォッ・フォッ・フォ!ファッ・ファッ・ファー!」と響き渡りサケの引きを楽しんでいた。
キッシーさんにカメラを向けて「テレマーク、テレマーク!」とポーズを決めてもらおうとしたが、隣でにらみを利かせている
チカさんの前でふざけられないと何時になく真面目になっている彼は一瞬しかそのポーズをすることができなかった。結局チカさんにタモ入れをしてもらい、やや黒いサケを釣る事ができたようだった。
回復した天気は厚着の1枚1枚をはがすように照りつけ、お昼過ぎにはTシャツ1枚になるまで暑くなった。 
相変わらず密猟者は減らなかったが、朝方駐車場に無造作に置かれた車が付近の住民や水産加工場に迷惑をかけ
て警察が出動しスピーカーでナンバーを呼んでいた。昨シーズン後半から帽子岩の秩序が乱れ始めており、今後こん
なことが頻繁に起きるようであれば釣り場の存続も危ぶまれるのではとみんなで心配していた。
午後からは散発的に釣れる状態で私も1本バラしてしまい、この後ヒットはしなかった。師匠は5本釣ったところで「7本釣ったら帰るんでしょ!」と奥さんに釘を刺されていたので、釣れたら帰らなくてはいけなくなるとぶらぶらしている贅沢な状態だった。キッシーさんもここに来て実力を発揮したのか4本というこの日にしては最高の結果であったし、竿先を折ってしまってキッシーさんと竿を交換し合って続けていたsinさんは初釣行で2本、この日2回目が2本といううらやましいくらいの釣果だったが、リンさんだけは妻と同じボウズに終わってしまい、キッシーさんたちにヒットする度に悔しがる叫び声が聞こえてきていたのだった。
キッシーさんが私とお話をしている時、リンさんの竿の動きに「今、合わせましたよ!うん、確かに合わせた!バラシだー!」そう言ってリンさんの所へ走って行ってしまった。
バラシに関してはチェックが厳しいキッシーさんはメンバーの僅かな竿の動きも見逃さないのだった。恐るべし!
17時過ぎには師匠と司さん以外全員が納竿し長い駐車場までの道を歩くが、4本のサケをリュックに入れて歩くキッシ
ーさんはさすがに辛そうでうれしい悲鳴を上げていた。


10月12日 前日同様の混雑した釣り場だったが、更に釣果は落ちているばかりか川で釣れているサケよりもブナが
多いという最悪の状態でもあった。
朝一で妻に1本掛かったが数十秒の引きを楽しんだ末にバレてしまった。私も風が強く波が暴れ始めた8時頃1本ヒットし、今日も1本は頂きと浮かれ気分で楽しみ、見えた魚体に「黒いな!」そう思った瞬間にバレてしまった。他にもアタリは数回あったのだがうまく食わせることはできなかった。
この日は夜明け頃に妻が釣り場へ来る途中に警察のバスを見ていたそうで、8時前には密漁の逮捕者が出たらしい。魚を釣り上げたと同時に手錠が掛けられたそうで、この日は6人現行犯逮捕されていた。

密猟者が並ぶ無法地帯
逮捕者は罰金10万円の他に地位や名誉を失うばかりではなく、釣り道具や魚を積んでいた車まで没収されてしまう代
償を払わなければならないのだ。
それでも30分もすると再び何十人もの密猟が始まってしまう現実を、正しい釣りをしている帽子岩の釣り人は悔しがるとともに、いつかはここで釣りが出来なくなってしまうのではと強い不安を抱いていた。
師匠は3本釣ってどんな時でも見せつけてくれるし、チカさんはなんと超銀ピカのメジカをGet!していた。クーラーボックスの中で燦然と輝くメジカを、来る人みんなに見せびらかし誇らしげに笑っていた。普段着姿で現れたキッシーさんもチカさんのメジカを見せびらかされていたが、メジカを持って記念写真を写してもらっていたチカさんのサケにウルシさんがタバコを銜えさせようとして「やめてくれー!」と言っていたチカさんが実に印象的で楽しそうだった。

司さんの連れ合いで2年ぶりにこの日1本釣った方は、あまりの感激にその時の記憶が飛んでしまったそうで全く覚え
ていないらしい。しかし、これがアキアジ釣りの本当の姿だとも思うのは私だけだろうか?釣れないから川で釣る、果た
してそれで充実感が得られるのだろうか?簡単には釣れないからこそ釣れたときの感激は計り知れないものがあるの
だと私は考える。
風の冷たさに体力も奪われていたので10時には帰り支度を済ませ、キッシーさんとゆっくりお話をしながら駐車場に戻った。先週とは打って変わって出る言葉は「アキアジ釣り難しいから!投げて巻くだけ・・・・では釣れん!ガンガン来ないから・・・」そう話しながら。
今週は期待が大きすぎた帽子岩だったので、本来ならば1本でも釣れるとうれしいはずがボウズのような悔しい気分で去らねばならない複雑な心境だった。
昼食に常呂レストハウスで10月から解禁の「カキづくし定食」
を食べたが、小粒のカキがたくさん入っていて実に安く美味しいものだった。ここの〇〇づくし定食はおすすめである。

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