1月の釣り



   ■ 網走湖(女満別湖畔)

1月28日 冬のワカサギ釣りは、何年も前から憧れていた釣りの一つであった。しかし、近場にあるダム湖は釣果が少
ないし、釣れる釣り場は遠いので、冬道に長時間神経を使うことにはためらいがあったのだ。それよりも重要だったの
は、夏の釣りと違い、重装備ともいえる様々な道具の準備が必要なことだった。
万全の準備をしてから事にとりかかるという性分であるから、ワカサギ釣りを始めるには資金不足だったのである。
そしてようやく、長い準備期間の末にその時がやってきたのである。


19時半に自宅を出発、すでにマイナス14℃という寒さに雪までも降り始めていた。
高規格道路までは大型車とすれ違うたびに前が見えなくなり、こんな運転を何時間もしなければならないのかと思うと気がくじけそうになった。しかし、白滝からは別世界になり、雪も少なく舗装路面が出ているところも多かった。
キッシーさんに電話をすると、どうも予定していた呼人湖畔は釣れていないということで、女満別湖畔に釣り場が変更になった。久しぶりのルクシルートもほとんど雪のない路面だったので、ストレスなく快適に走り、トンネルを抜けると北見メビウスのスキー場のナイターの照明がとびこんできた。
北見の気温はマイナス18℃で、常呂川からたっているもやが周囲を包みこんで見通しを悪くしていた。そして、女満別のコンビニへ寄ってから道の駅に駐車してそこに泊まった。


1月29日 4時半頃に目が覚め、しばらくウトウトしているうちに目覚ましが鳴った。
メルヘンの丘道の駅のトイレは新しくてきれいで、暖房も入っていたので快適に使うことができた。準備を済ませて車の
エンジンをかけて待っていると、キッシーさんが到着したのですぐに出発した。
この日同行予定だったMasuさんは早起きが苦手ということで、後から来ることになっていた。
湖畔の道を5分ほど走ると管理用のプレハブ小屋があり、さらにその奥の行き止まりとなるところまで行ってから、方向を変えて車を止めた。すでに10台以上の車があり、湖上にはテントの灯りが見えていた。
初体験のワカサギ釣りは楽しみではあったものの、この日の寒さはこれから先どうなるのかと心配になるほどのものに感じた。車内はFFヒーターに守られてはいたが、カーテンを開けた窓ガラスの車内
が凍り付いていたほどだったからである。おそらく外はマイナス20℃近くはあっただろう。その寒さのなかで長時間の釣
りに耐えられるか心配だったのだ。
大型のソリに荷物を積み、200mほど離れたポイントまで湖上を移動しはじめると、イメージしていた深い雪はほとんど
なく、寒さのために暗いキャップライトの明かりでも難なく移動することができた。
少し早く着いていたキッシーさんのテントの横に自分たちのテントを立てたが、さすが小川キャンパルで広告どおりの10秒とはいかないが、あっという間に新築の我が家が建った。ただ、付属についていた金槌がまったく役に立たないことも分かり、キッシーさんの見るからに強そうなハンマーを借りてペグを氷に打ち込んだ。
荷物を運び入れてみて感じたことは、4人用で購入したテン
トも2人で使ってちょうど良い広さだった。
キッシーさんの7人用でも4人が限界という広さである。当初、3人用を考えていたので、これを選んで正解だった。
私たちのテントはノースガードGF4、キッシーさんのテントはノースガード7である。
同じノースガードシリーズだが、キッシーさんのテントは網窓が付き、フレームはアルミで、私たちのGFは窓がなく、フレ
ームがグラスファイバーとなる。窓付きテントが少しうらやましかった・・。
キッシーさんからアイスドリルを借りて、これまた初体験の穴あけだったが、30cmほどあった氷にも軽く、すぐにあける
ことができた。
準備に時間がかかり、小さなエサ付けも苦労して、ようやく1匹目が釣れた時には、早くもキッシーさんは十数匹釣って
いた。柔らかな竿で浅い棚から伝わるワカサギの引きは意外に強く、埠頭でチカに混じって釣れるときとはまるで違っ
た魚を釣っているようであった。
しばらくするとMasuさんも到着したようで、隣からは賑やかな声が聞こえてきていた。7時半を過ぎて、湯沸し用のストーブを忘れてきていたので車に取りに戻ると、軽トラックがやってきて中から小さなおばさんが一人氷上のテントへ向かって行った。それは監視員の人だったようで、入漁料の徴収に来たのだとだとすぐにわかった。私たちのテントへも声をかけている様子だったが、財布は私が持っていた・・・。
遠くから見ていたのではっきりしなかったが、その様子から推測するに、キッシーさんにお金を立て替えて頂いたとみたので、安心して車内で休憩してから戻ることにした。テントへ戻る寸前に肝心のストーブを忘れたことに気付き、再び車に戻り戻ったせいで、すでに8時近くになっていた。
朝食用の「芋子汁」(山形県の名物料理で里芋をいもこと呼び、牛肉をはじめたくさんの具を入れたもの)を温めようとストーブに点火するも、燃え方が変だった・・・そのうちに炎が立上りテントに燃え移りそうな勢いだったので、タオルをかけて消火した。
不完全燃焼の匂いが充満して頭が痛くなりそうだったが、早い処置のおかg
げで大事には至らなかったが、ストーブは使い物にならなくなってしまったようであった。これは、帽子岩で使ったときに
海水をかぶってしまったものの、メンテナンスを忘れてしまっていたせいであった。
真冬の長時間にわたる釣りにストーブが使えないということは致命的ともいえる状態になってしまったが、快調に釣って
いるキッシーさんのテントにお邪魔して鍋を温めてもらい、4人で食べながら、ワカサギの釣り方を伝授してもらうことが
できた。その後もお湯を沸かしていただきに何度かお世話になってしまい迷惑をかけたが、この釣りのためのいろいろ
な道具やその扱い方をキッシーさんから学ぶことも多かった。
食事も済んで暖まったところで、自分のペースでワカサギ釣りなるものを体感し始めてきたところだったが、朝方のように食いはよくなくて辛抱の釣りとなった。エサ付けにも少しは慣れてきたし、誘いやアワセのタイミング、手返しの方法などなかなか奥深いものがあった。   
テントの中は快適な温度だったので手袋も必要なく、僅か1台のガスヒーターでずいぶんと暖かいものであることがわかった。
テントの上についている換気窓は常に開放しておいたが、時々入口を大きく開けて空気の入れ替えをすることも忘れなかった。
狭いテント内でタバコを吸うと、それだけで換気が必要なくらいに中は狭いこともこのとき体感した。
ワカサギ以外にも外道のトゲウオが釣れるが、これはワカサギよりも小さくて引きが弱いし時々怒って背びれと胸びれを立てるので、初めの頃は知らずにトゲに触ってしまった。チカ釣りとは違い大きな群れが来ることはほとんどなく、一度だけ4匹が連なったワカサギが釣れただけだった。
それでも、いつの間にかバケツの中にはワカサギが泳いでおり、数は数えていなかったが、型が良いので引きも充分に楽
しめたし、時間の経つのも忘れていた。
お昼頃には気温も上がりはじめてきたが、暖かいテントの中ではそのことにも気付かず、湖の底にいるワカサギのアタ
リを待った。近くでは焼肉を楽しむグループもあり、みんなそれぞれの楽しみ方をしているようだったが、外へ出るとあ
っという間に指がかじかんでしまうほどであった。時々雪も降っていたが積もるほどではなく、天気予報の「全道的に大
荒れ」はここ女満別にはあてはまらないようだった。
       
            カワガレイのダブル
午後からは、なんとかエサ付け、アワセのタイミング、棚など少しだけわかりはじめてきて釣果も伸びはじめていたが、
小さな群ればかりだった。アタリが判りはじめるとトゲウオも多く釣れてしまったり、エサの交換時間が長くなったりと幾
分問題もあったが、妻と競争しながら楽しむことができた。
14時少し前には隣のキッシーさんたちから歓声が上がり、面白い魚が釣れたからと呼ばれたので妻も一緒に行ってみ
ると、Masuさんにカワガレイが釣れていた。
海で釣れると触りたくもない外道中の外道であるが、ワカサギのような小さな魚を釣っている時には、たまに釣れるとそ
の引きは面白そうで、少しうらやましくも感心してカレイを見ていると、なんと!今度はキッシーさんにカワガレイらしき大
きなアタリがあった。
上がってくるカレイを撮影して、二人そろって記念撮影をしていたが、自分たちのところにもカワガレイがかかっていた
ら大変!ということで、すぐにテントに戻った。結局、自分たちの仕掛けにはかかっていないようで、安心したものの少し
がっかりしたことも事実だった。

     
            Masuさんの釣果
16時近くなって外へ出ると、雲の中の太陽は山際に近づき、時機に暮れようとしていた。16時15分で片付け始めようと
話していたが、その時間になると急にアタリがなくなったので、次に釣れたほうから順番に納竿と話していると、すぐに
二人とも釣れてしまい納竿となった。
外へ出るとたくさんあったテントは全てなくなっていて、湖上から車へ向かっている人たちの姿が見えた。荷物をソリに
乗せ終わる頃、キッシーさんたちも納竿して、片付けを始めた。
テントは撤収もワンタッチであり、冷え込んできた外での作業には最高のものだと思った。
釣果はというと、さすがベテランのキッシーさんは200匹以上、Masuさんも3桁釣り、私たちは二人で142匹という結果だ
ったが、充分に満足のいく結果となり、釣りばかりではない氷上の楽しみを知ることとなった。
今回、氷上ワカサギ釣りを体験して感じたことは、子供の頃の懐かしい遊びが「かまくら」正にこれであると思った。戸
外の雪の中にある秘密基地のようなもので、中は外とは比べものにならない暖かさで、かまくらに持ち込んだおやつを
食べたりして、当時何をして遊んでいたかは思い出せないが、とにかく楽しかったあの素朴な遊びと全く同じものを感じ
た。

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