9月のオホーツク Vol.1



   ■ 網走(帽子岩)

9月3日 網走帽子岩からは、この朝もホットな情報が次々と入ってきていた。仕事が忙しくて釣りに行けないと言って
いたはずのチカさんは連日の釣行で絶好調だというし、リンさんは少ない釣行をしっかりモノにしていたようである。で、
レガオさんはというと、この日もしっかり釣れていたようだった。
キッシーさんも連日の仕事前釣行に、この朝はたった一人ボウズの口惜しさを味わったそうで、夕マズメに再出撃した
努力の成果、見事釣り上げたと帽子岩の夕陽を見ながら私に電話をしてきた。私にもぜひこのポイントで・・・というお
誘いだったが、やや遠いということもあり断ってしまったのが、後から思うに私の運の尽きだった気がした。
19時に自宅を出発、やや疲れ気味ではあったが、私が到着する頃には現地駐車場で待っていると言うキッシーさんの
元へ向かった。しかし、再び電話が入り、連日の疲れの為に早寝するので自宅待機すると連絡が入った。
網走湖と能取湖の間を通過中には師匠からも、すでに現地入りしたという連絡があり、駐車場の空きが残り僅かだと
聞いて、翌日の混雑が想像できた。網走は程々に釣れていたのだった。
帽子岩駐車場に着いて、1台入れるようなスペースがあったので、お願いして車を寄せてもらおうと頼んでみたが、その
方は「広くドアが開けられる状態にしておきたいので・・」と言う。なんと了見の狭い人なのだろうか・・・トラブルは避けた
いので、すぐに諦めて別の場所に止めたが、車のナンバーは「帯広」だった。また、ここにもこのナンバーか・・・・。罪を
憎んで人を憎まず・・・。
私たちの前で準備していた旭川の人と釣りの話になり、ついつい熱中していたところへタクシーが止まった。その中か
ら出てきたのは、昨年知り合いになった旭川の司さんとその仲間であった。早く着いたので市内で飲んできたと言って
いたが、こんな楽しみ方ができるのも帽子岩の良い所かもしれない。
久しぶりに夫婦二人だけの静かな前夜となり、早く寝られるのは結構だが、なんとなく寂しい釣り前夜だった。


9月4日 少し早いかな?と思ったが、2時半に合わせた目覚しで起床。ポイントに着くまでには早くも沢山の釣り人が
準備をしていた。ポイントをみつけた私も準備をしていると隣の方が話しかけてきて、聞くとトマムから月に3回程度来る
と言う。すごいなあとその時は思ったが、人のことは言えない自分に
後から気づいていた。
美しい朝焼けを見ながら新しいウキに目印のルミコを付けて第一投!・・・今朝は随分潮の流れが速いなあ、と思ったらウキから抜けたルミコが一人で右へ流れていたのだった。キャスティング中止、もう少し明るくなるのを待ってから再スタートした。
薄暗い時に、妻が3人隣位にいる若者がタンクトップ姿ではないかという。私はまさかそんなことはないだろう、気温は12℃程度だから誰しも完全装備であるし、第一に蚊が多かった。しかし、彼は本当にタンクトップだった事が明るくなってから判った。信じられないものを見た気がした・・・。
明るくなってもしばらくは釣れている様子はなかったが、周囲でポツ
ポツとサケが釣れ始めた。
アタリは微かにあるもののアワセを入れるほどのものではなかった。
そんななかでも師匠だけは不思議と、いつものように釣っていた。釣れないなあと何気なく師匠を見ると、竿が曲ってい
るという具合に釣れているのもいつものパターンだった。
キッシーさんたちは予想通りに釣れていたようで、今シーズン初の網走と言うtanさんも2本釣ったと連絡があった。
隣のトマムの方にヒットしたので、朝の約束どおりにタモ救いに行ったが、残念・・・バレてしまった。それでも昨日1本釣
っているせいか余裕があったように見えた。

      

なんとなくダラダラした、キッシーさんといるような釣りになってしまい、こうなったら師匠の専属カメラマンでもやろうと決
めて釣れる度にカメラを向けていた。
見える範囲で全体25本程度だろうか、期待したほどは釣れていなかった。7時には、車に戻り休憩したりしていたので、
やる気もなく釣れる可能性も自分でなくしていた気がする。
この日の朝食はカップめんであったが、釣り場にコールマンのガソリンストーブとやかんを持ってきていたのだ。こんな
ところで食べるカップめんはご馳走で、熱いものを食べることができる喜びはその場でしか判らないだろう。
10時前にはすっかり釣る気もなくなってしまい、キッシーさんたちの所へ遊びに行った。キッシーさんは3本、リンさんは1本釣れていて、2本釣ったtanさんは、その表情にどれだけの喜びか読み取れるものがあった。
しばらくしてから自分の釣り場に戻って釣りを再開したが、すっかり魚もいないようであった。師匠が帰り支度をしているところにキッシーさんたちも納竿してやってきて、みんなニコニコ顔で帰っていった。
ボウズは避けたいと思い、なんとなくのキャストを続けていると、例のタンクトップの若者が別の場所で釣ったサケを持ってやってきて、朝の自分の釣り場に入ろうとしていた。
突然、彼がタモを貸してくださいとやってきたので、妻が一緒に行ってみると、魚をテトラポットの間に落としてしまったそうだ。結局、魚は掬うことができなかったが、意外に喜んでいたと言う。

また釣っている・・・
理由を聞いてみると、美幌から自転車で走ってきたので、帰りが重くて大変だから・・・彼の体力と根性に脱帽してしまっ
た。金髪頭に細い眉は、一見ヤンキーのようにも見えたが、どうしてどうして礼儀正しい人物であった。貸したタモは柄
までタオルで拭いて返してくれ、お礼の言葉遣いも立派なものであった。人は見かけで判断してはいけないことを彼に
教えてもらった気がした。
エサも少なくなっていたので納竿し、駐車場に戻って昼食を食べてから買物に出かけた。再び駐車場に戻ってから、妻
は昼寝をしていたが、何となく寝付けなかった私は再び釣り場へ向かった。
キッシーさんの勧めるポイントへ行き、隣のおじさんとお話しをしながらキャスティングをしていたが、その人も帰ってし
まい、一人でボーっとしている所へ妻がやってきた。
太陽が雲間に隠れ、海と雲と青空のコントラストが巨大な絵画のように見えたのは、きれいというよりも怖い感じがし
た。
山際に日が傾く頃、目の良い妻がモジリを発見したが遠すぎる。そして、私にも見える跳ねを発見!だが射程距離外。再び、妻が大きなモジリを発見したものの、すぐに網の方向に行ってしまった。
そこへ蚊の大群が来襲、数箇所命中!痒かった。レガオさんが電話をくれてから、すぐに自転車でやってきた。妻とレガオさんが二人で、少し遠めだがグルグル輪を書くようなモジリの大群を発見するもダメ。しかし、遠かったがあちらこちらで跳ねるサケの姿に、翌朝の期待をしつつ、暗くならないうちにと納竿した。
帰り道、メガ弟さんから電話があり駐車場で待っているから早く来てくれという。途中、師匠夫婦も一緒になって話を聞くと、午後から2本追加して7本釣ったそうだ、さすがとしかいえないし、この釣果は他の人には帽子岩の釣果の参考にはならないとレガオさんとも話してい
た。
網走はお祭りの最中だったので、それとは全く関係ないが飲みに行こうということになった。レガオさんのひと仕事を待
つ間に、久しぶりにメガ弟さんと車内で楽しくお話をすることができた。しかも、市内まで車で送ってくれることになり、師
匠夫婦・レガオさんにレガオママ、私たち夫婦を2回に分けてランボルギーニでピストン輸送していただき、ブオーンとカ
ッコよく去って行ったメガ弟さんだったが、翌朝は地元ローカルポイントで撃沈の運命が待っていたのだった。
6人で飲みながらする釣り談義は楽しく美味しいものだったが、こんな楽しみも可能なのが網走の素晴らしい部分でも
あった。タクシーで戻ってみると、見た事のある親子がお出迎え、なんと!チカさんとチカJrだった。翌日はチカさんや
ウルシさんのグループが大勢やってくると聞いた。きっと賑やかな帽子岩になるであろう。
お酒のせいもあって、この夜は意外と早めに眠ることができた。


9月5日 張り切って1時に起きようとした朝だったが、目覚しを0時50分ではなくて12時50分に合わせていたため、妻
の目覚しの2時半に起きてしまった。外は早くも沢山の釣り人が歩く音も聞こえ、絶望的な気分のまま準備を急いだ。
出発前にレガオさんを起こして、とりあえず大急ぎでポイントを目指した。
入りたかったポイントはすでに埋まっていて、それでもその隣になんとか釣り座を確保した。急いで走ってきたので汗だくだが、蚊に刺されるので我慢しなくてはならなかった。しばらくしてからレガオさんも到着すると、先に入っていた人たちはほとんどがレガオさんの知り合いだったそうだ。そんな訳で和気藹々の雰囲気が釣り場に漂い、帽子岩らしい空気が流れていた。
暗いうちに妻も到着したので3人揃って夜明けを待っていると、誰かが人工衛星を見つけたので空を見上げると、ゆっくりとした速度で南の方角へ明るい星のような人工衛星が流れ
ていた。そしてまた誰かが月明かりの中で根がかりしたウキを発見して回収作業、見事に昨日の私がなくしたウキを回
収して返してくれた。感謝!
4時過ぎ、薄明るくなってから他の人たちがキャスティング開始。少し遅れて私たちもロッドを握った。跳ねはなく、静か
な、波もほとんどない湖のような海面だった。しばらく続いた沈黙を破ったのは、やっぱりベストポイントの人だった。し
かし、釣れたのはややブナがかったサケで、他人事ながら少しだけガッカリした私であった。

1本目
この後も釣れるのはベストポイントばかりで、やっぱりあそこじゃないと釣れないのか?そんなことを考えていた時だった。
4時55分、沖目からキャスト後、3分の2程度リーリングしたところで、妙な感覚を感じた。その直後に軽いアタリがあったので二度ほど誘った直後に大きなアタリがあった。同時にウキが沈み反射的にアワセを入れていた。そしてもう一度大きなアワセを入れてから巻いてみると重かった。
この時は不思議と余裕があって、周りの様子もしっかり覚えていた。妻の「良かったね!」という声や自分のロッドがどんな曲り具合をしているだろうか?とか、タモの場所まで目が探
していた。
これぞ前期群のビックファイトというような引きと粘りのあるサケで、巻いても巻いてもドラグを鳴らして走ってくれた。
見えた魚体はお腹が白い銀ピカのオスで、サイズも大きそうであった。妻が待つタモの中に最後はスッと入ってくれて、
1週間ぶりというよりも、先週の1本目はすぐにネットインしたサケだったので、1年ぶりのような感じであった。
83cm・4、4kgの私にとっては大きなオスだった。
魚の処理をしてから、仕掛けが心配だったので新しいウキセットを付け直してから始めた。そして僅か15分後の5時25
分だった。
少し沖目でアタリを感じてからすぐにグイッと引き込まれざまにアワセを2発!今度もバッチリ乗ったようだった。
レガオさんに「ゴメン来ちゃった・・。」そんなことを言ったような気がしたが、定かではない。相変わらず凄いパワーでドラグは鳴っているし右手が重かった。
やっと見えたサケもやっぱり銀ピカであった。妻の待つタモに入ったのでロッドを下げた時に飛び出してしまったが、すぐにロッドを立ててなんとか掬いなおしてくれた。針は口の横にもう少し強く引くと切れてしまいそうな掛かり方だった。 そしてこ

2本目
の時はオスだとばかり思っていたが、実はメスであることが後になって判った。72cmだが4kgはなかなかの重量だっ
た。
メスだと判ったのは、1本目のオスを神奈川の釣り好きの叔父さんに自慢する為に発送用に腹を裂いて塩ふりしたの
だが、そのついでに2本目も腹を裂いた時、中から筋子が見えて初めて気付いたのであった。そういえば何となく顔が
小さくて優しいし、脂びれも小さくて尾びれの形もメスっぽかった。
レガオさんの知り合いの方たちも順調に釣れていたが、朝からお腹の調子が悪かった私は、後ろ髪を引かれる思いで
釣り場を離れ駐車場のトイレに走った。途中、師匠の奥さんとチカJrが座ってくつろいでいたので話しかけると、なん
と!チカJrが一番釣っていて3本の竿頭だというからたいしたものである。もっと話をしていたかったが、お腹が悲鳴を
あげていたのでその場を離れると、今度は一番根元で釣っていた司さんが話しかけてきた。今日は2本釣ったと満面
の笑みで喜んでいる彼の笑顔は昨年もここ帽子岩で見たものだった。ここでももっと話をしたかったがすぐに出発した。
司さんはこの後にもう1本追加したと翌日に聞いた。駐車場に続く砂利道にはブッコミのいつものおじさんが竿を立てて
いて、いつもの私ならば「今日は何本釣れましたか?」と聞くのだが・・通過。砂浜には珍しく数十本のブッコミ竿も立っ
ていた。
用を済ませて戻る途中、ウルシさんの姿を発見。やっとサケが釣れたが、食い渋っていたのを目の前まで誘ってきてやっと釣り上げたが、どうしてオレにはこんなブナオスなんだー!そう言って笑っていて、私の妻と同じ1本目だー!並んだと伝えてくれと笑っていた。この日のチカさんやウルシさんのグループだけで20本ほど釣っていたというから、さすがである。
まだ少しお腹の不安は残っていたものの、釣り場に戻ってみると良い時間帯は終わってしまっていた。この場所が釣れているのを見ていた人達が数人近くに入ってきたが、時々釣れている程度だった。
朝食を食べて背中から差す太陽が暑く感じるくらいの良い天
気の中、のんびりした雰囲気の釣りとなってきた。
目の前をゴムボートに乗った釣り人らしき人が一人現れ、見ていてもよく判らない動きをしていた。レガオさんがフルキ
ャストすれば届きそうな、釣りの邪魔になりそうな距離を横切って行き、しばらくしてからまた現れ、今度は目を疑うよう
な行動を始めてしまった。なんと!定置網にボートを横付けして釣りを始めたのだ!そのうちにヒットしていて竿が曲っ
ているのが見えた。釣り人なら一度は考える悪い妄想の釣堀を現実にしてしまうとは?明らかな犯罪であり、たぶん窃
盗罪になるのでは?
妻の右にいた若者が銀ピカのサケを釣ったが「どうする、まだ生きているよな、リリースするかー」という声が聞こえてきて、すぐにメスと思われるサケは海に返された。すこしだけもったいないなあなんてことを思ってしまった。
しばらくしてその若者に再ヒットしたすぐ後の8時45分だった。妻にもヒット!このヒット前に数回のアタリがあって、何投かした後の遠投でのアタリだったので、慎重に誘ってやっと食わせたそうだ。このときレガオさんが見ていたそうだが、妻はいつもの大きなアワセを入れずに巻き始めたそうで、それでも強い引きに竿が思い切りのされていた。
レガオさんにタモ入れを任せて、私はビデオを回した。二人の後方に立って迫力のシーン撮影だったが、隣の若者が自分の魚でせい一杯で、ドラグ調整できずに妻の方に魚が走ってしまっていた。
妻はその状況を見ながらドラグを締めて早く魚を寄せてしまおうと考えたようだが、数秒後に20m程前で暴れた瞬間に
バレてしまった。
バラした本人もタモを持ったレガオさんも残念がった映像が最後に残ったが、単なるバラシではなく、価値ある貴重な
格闘シーンとして残ったことになる。
それから少し魚の気配がみられ、ベストポイントではヒットシーンが少し続いたのでネットに入るまでのサケの姿などビ
デオに収めて楽しんだ。
その後真面目にキャスティングを続けていると、またしても食い気のないアタリがあった。早い気がしたが、「フンベの
主」清さんに聞いた合わせ方を試してみたところ、掛かった手応えがあったので「もらったー!」とばかりにアワセを入
れると、まさかの合わせ切れとなってしまった・・・。
今シーズン初の合わせ切れではあったが、原因も判っていたのでさほどガッカリはしなかった。
10時近くなってしまい、この日ノーヒットのレガオさんも諦めかけていた9時50分、レガオさんの喜びの声が聞こえてきた。遠投したルアーにメスザケが食いついたのだ。約束どおりにビデオカメラを回し始めた時には、すでに半分以上は寄ってきていた。
タモを持って待つ妻とレガオさんのファイトシーン、固めのロッドだが意外に曲る様子など映像は多くの情報を後から教えてくれる。その後は簡単に寄せて、すぐにネットインした。
思わず出たレガオさんのガッツポーズは、6時間の辛抱が結実した正直な喜びの表現だった。その後、師匠やチカさんたちも帰ってしまい、まだ釣れる気配はあったが納竿とした。
車に戻ってからビデオを観て楽しんでから、レガオさんと別れた。昼食を市内で済ませた後から急に睡魔が襲ってきたが、
サケの発送をなんとか済ませ、我慢できずにサイクリングステーションの駐車場で横になった。
いつの間にか眠ってしまっていたようで、目が覚めると16時半にもなっていた。昼前に納竿したのに、自宅に着いたの
は19時だった。





   ■ 網走(帽子岩

9月10日 早朝から出かけた39号線で、車載レーダーがまた異常を知らせてくれたが、気付いた時はすでに遅く「捕ま
ってしまうのか?」と思ったが無事通過・・・?・・・。これで再び運を使ってしまったのか!とガッカリ!そんなこともあった
が、心配は別なことに向けられることとなった。
網走は第四埠頭が長期閉鎖となったようで、第五埠頭では絶対に釣り座は確保できないだろう。帽子岩は波が高いと
キッシーさんや師匠から伝えられていたが、とりあえず19時に家を出発。
途中、チーム網走は全員が帽子岩を明日の釣り座とすることを決定、と連絡が入った。帽子岩駐車場は、この時期に
しては随分と混雑していたが、波はやはり高かった。早速、愛車シマノ号を走らせポイント付近を見に行くと、入りたい
場所に波はほとんどなかった。
安心したところで車に戻り、テレビを観ながらリラックスタイムを楽しんだ。この夜も静かで、二人っきりに波の音だけが
聞こえ、駐車場に泊まっていると思われる人たちもいつになく静かであった。


9月11日 2時半起床。ちょっと早すぎるかな?とも思ったが、キッシーさんはもっと早くにポイントへ向かうと話してい
た。ポイントへ向かう途中、真っ暗な闇の海へキャスティングする怪しい男と、見たことのある自転車を発見!キッシー
さんであった。数日前まで、マス網が入っていたときには随分とウキが引っ掛かっていたポイントだったので、網が外さ
れていると聞いてはいるものの、念のために針なしルアーで確認中だったという、さすが慎重なキッシーさんであった。
師匠の横に場所を確保してから、キッシーさん・リンさん・tan
さんと4人で夜明け前の雑談を楽しんでいたが、私は強い風
と寒さに耐えられず、テトラポットの隙間に入って子猫のよう
に震えていた。
スノーボードジャケットの中は長袖のシャツ1枚だった私は、
他のみんなのようにダウンジャケットやワカサギ仕様の完全
装備ではなく、風邪をひいてしまう可能性さえもあった。
やがて師匠夫妻や妻も到着し、いつからいたのか松さんもす
ぐ近くで待機していた。
帽子岩の方角から朝焼けが始まり、次第に目の前の海の波
が影のように見え始めると、気の早い釣り人たちがキャスティ
ングを始めた。
私たちはマイペースで明るくなるのを待っていたが、遠くでタモ網が動いており、釣れたことを示していることを発見!全
員が慌てて自分のポイントへ向かった。
左前方からの冷たい風も、キャスティングを始めてみると我慢できてしまうから不思議なものである。それでも寒さから
身を守るために、フードを頭に被った上から帽子を被っていた姿は、妻が言うように確かに変だったと思う。
ルアーは飛ばないうえに海水は濁っていて条件は悪かったが、釣り人の姿がはっきりと見え始めた頃、師匠が「キッシ
ーさん釣れているよ!」と教えてくれた。チーム網走の第1号はキッシーさんとなってからは、次々と周囲も釣れ始め
た。師匠の隣の松さんにもヒットして、そろそろ自分にもと機会を待っていた。しかし、次も松さんにヒットしてしまい、師
匠は「こんなことは滅多にないことだ・・・。」そう言って驚いていた。
5時を少し廻ったところだった。風でアタリが判りにくく、そのアタリも微妙なものだったので、先週の聞きアワセを早速実行して、次の瞬間に確認と大アワセを連続技でやっていたようだった。風で飛ばないし、通常の半分以下のポイントでアタリを感じてから誘い始めたもので、ヒットしたのは随分と近くであった。
そのサケは力があるというか、重く走る感覚にオスを確信し、少しの間格闘してからその姿が見えた。
銀ピカのオスだと判ってからも何度かドラグを鳴らして沖へ走ってくれ、妻の待つタモに入ってから、やっと実感が湧いてきたというこの日の1本目であった。76cm・4、5kgは少々太めだが状態の良い銀ピカオスだった。
魚の処理をしているところに、早くものんびりムードになっているキッシーさんが現れ、お互いに祝福しあい「後はのんび
りやりましょう!」そう話していた。この日は釣れてはいるものの、その場所が限定されているような状態であった。そし
て、群れも忘れた頃にパラパラとやってくるような気の抜けない釣りでもあったが、1本釣れると余裕から来るところの
余韻を楽しむ時間が長くなってしまうのだった。

     

tanさんのヒットシーンは見られず残念ではあったが、車検のついでに釣りをしにきたのに、しっかり1本目を釣ってい
た。リンさんはテトラポットにラインが擦れてしまい、切られてしまってバラシだった、残念。師匠も1本釣っていたが、い
つものように次々とはいかない最近の不調さであった。そして、妻にもヒットか?と思ったら痛恨のアワセ切れ!
駐車場に近いポイントは高波を被ってしまうほどの危険な状態だったので、釣りをしている人は少ないが、その反対側
の川には密猟者が並んでおり、横並びの行列は50人以上はいたであろう。
今年から特に取締りが強化され、随分と逮捕者も出ていると聞いたが、この日も帽子岩だけで5人以上逮捕された。罰
金だけではなく、大切な道具もすべてそれに関わったものは車でさえ没収されてしまうのだ。
左側の少し離れたポイントに昨年何回か一緒になった、旭川から来ている人を発見した。この人の服装は目立つので
すぐに判った。自分の周囲は全然ダメだと話していたので、私の数人横の僅かに空いているポイントを教えてあげた。
市内から聞こえてくるお寺の鐘が知らせる6時になると、風もいくらか弱くなり、後方から昇った柔らかな暖かさの日差し
も、じわりと体を温めてくれていた。
この日の潮は右に流れていたので、ウキが近づく時には隣の人の前を通ることになる。6時55分、もう巻き取らなければと思った瞬間にグッと引かれざまに軽めのアワセを入れ、次に大きく合わせた。巻いてみると軽かったので「ウグイかなー」そう言うと、目の前で見ていた隣の人が「いや、マスだわ」そう言って教えてくれた。一度だけドラグを鳴らして少しだけ走ったが、すぐに近くまで寄ってきてその姿が見えた。銀ピカのオスである。この時期にしては状態も良く、ネットインする前にも暴れていたほどだった。タモ入れは見ていた隣の人がしてくれた。60cm・2、3kgのオスマスはマス好きの知り合いに行き先が決っているので勿論キープ。
こうなるとついつい力が入ってしまったのか、妻のNewロッドがキャスティング中に折れてしまった。先端から50cmほ
どの部分だった。いつもならばここでリタイヤという妻だったが、なんとこの日は気合が入っていたのか、駐車場に予備
のロッドを自分で取りに行った。
後日、購入した釣具店に保証書とともに修理依頼をしたが、4000円だけで済むそうだ。ただし、この保証は一回限りなので、もう失敗は許されない。
この日仕事だったレガオさんからも電話があったが、ほどほど釣れている楽しそうな雰囲気にうらやましそうだった。
絶好調の松さんは3本目をヒットさせたが横に走られてしまい、キッシーさんはじめ3人ものルアーを引っ掛けて、時間をかけて釣っていたのは、いつもの松さんらしかったが、引っ掛けられたほうは不運だったし、全部外すには相当の時間を要していた。その後、松さんはホクホク顔で何もなかったように帰った。tanさんも1本バラしたものの、1本は釣れたので満足して納竿していった。
すっかり暖かくなり、5人ほどやってきた海上保安庁の摘発のせいか、密猟者もいなくなって気分の良い帽子岩となった。キッシーさんと私は丘に上がって話をすることが多くなっていたが、こんな楽しみ方がチーム網走流でもあった。第一にキッシーさんは「アキアジ持ち帰り禁止令」なるものが、すでに奥さんから発令されていたので、今朝の1本もどうしようかと考えていたほどである。対照的だったのはリンさんで、その後も1本ヒットしたものの、キッシーさんがタモを持って近くに行ったときに痛恨のバラシをしてしまっていたのだった。
その後もひたすらロッドを降り続けるリンさんを見ながら、ダラダラしていた私たちだった。
妻が昨年使っていたダイワのファントムVRを車から持ってきたので、キッシーさんが「軽いし柔らかいねー」などといっ
て触っていたが、再セットアップも済ませて私たちも真面目に釣りをしようということになった。
9時08分、私が2投目をキャスティングして、妻が第1投したときだった。再び妻が「また竿折れたー!」と言った、その先数メートルに竿先があった。そんなときだったが、20mほど先の私のルアーにゴン!というアタリがあり、それから僅かのうちにウキが沈んだ。アワセもバッチリ決ってドラグを鳴らしてくれ、バシャバシャと跳ねたのでメスかな?と思った。それほどの時間もかからずに近くまで寄せたが、妻はロッドの先を回収中だった。右隣の人の目の前に魚が行ったので、迷わず一気に掬ってくれてネットインした。71cm・3、6kgの小ぶりなメスだったが、銀ピカであった。
幸いにして妻の竿は折れたのではなくて、抜けていただけであった。つなぎ目がきつめのロッドだったので、しっかり入
れていなかった本人の点検ミスだった。

夫婦の連係プレー
その後は奥の方の一つのポイントが時々釣れたり、私たちの周囲のベテランさんたちがポツポツ釣れる程度となった。
私もすっかりのんびりしていまい、テトラポットに寝転んでビデオ撮影をしたり、みんなでおしゃべりをしながら過ごした。妻も諦めてしまったのか昼寝を始めた。
10時55分、リンさんにいささか気遣いをしながらのキャスティングだったキッシーさんにヒット!難なくオスザケがネットインされた。持ち帰れないキッシーさんだったので、貰ってくれる人をみつけてからキープし、ついでに朝の1本もその方に貰って頂けることとなって、ホントに良かったよかった。
みんなが陸に上がる時間が多くなって、そんな中でもリンさんだけは信じがたいような体力でキャスティングを続けていた。昨年と比べて何倍も竿を振っている師匠の奥さんは、それでも他の人に比べると
キャスティング回数は少なかったが、ふと見ると奥さんのロッドが曲っていた。そしてなかなか良い銀ピカのサケが釣れ
たのだった。
釣りをしないでおしゃべりばかりをしていたが、全体的にも釣れなくなった昼過ぎに、ゆっくりと片付け始め納竿した。
この時点で師匠は珍しくたった2本しか釣っていないのが不思議だった。

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