3月の釣り


   ■ 網走湖(女満別湖畔)

3月9日 網走湖の、この時期特有の抱卵ワカサギを釣りたくての釣行である。
予定していた日曜日の釣行は、天気予報では「荒れる」とのことで、急遽土曜日の釣行となった。
前夜からの出発は久しぶりだったが、ここ数日間天気が良くて路面はアスファルトが出ていて走りやすいはずが、出発
時には軽く積った雪が滑りやすい路面に変わってしまっていた。
高規格道路の出口付近では、たった今発生したばかりの事故を見てしまう・・。おそらく単独事故だろうが、大型トラック
が路側帯に突っ込んだ車を引き上げるべく準備をしていた。
計らずも事故を目撃してしまった私は、さらに速度を落として走ることになり、乾いた路面が現れる白滝付近までノロノロ運転をしたが、後続車は全く来ない。
佐呂間の若佐からルクシ峠を通り、端野へ出て、美幌でガソリン補給をしてみると、一番安いスタンドでも10円近く高い。翌日に通った北見市では20円も高いスタンドもあったほどで、道内場所によっては価格差は随分とあるものだ。
女満別のコンビニで買物をしてから、近くの道の駅に車内泊をするために入ってみると、すでに5台ほど先客があり、こんな時期でも寝

10日朝
泊りしている人がいることに驚かされる。しかも、エンジンをかけっぱなしにしている車は1台しかないが、寒くはないの
だろうか。

3月10日 5時の目覚しで起きた時には夜明けが始まっていて、まだ早いかなとのんびり車内でくつろぐ。
妻が起きてから準備を始め、道の駅を出発する頃には完全に明るくなっていた。
国道から見える女満別温泉街のアーケードから曲がって湖畔に続く道に入ると、私の後ろに三台も後続車があり、そ
の車全てがワカサギ釣り客だった。
温泉街を過ぎて、キャンプ場付近を通過すると道は細くなり、砂利道へと変わる。こんなに遠かったかなあと思いながら走っていると、管理所の建物が見えたが、まだ人はいない様子。
ここからは、車2台がやっとすれ違えるほどの道になり、対向車線には釣り客の車が停まっていて、200mおきくらいに方向転換のためのスペースが用意されていて、500mほどの間隔で仮設トイレも設置されていた。
適当なところで方向転換をして、他の車に倣って対向車線側に車を停めた。
外はマイナス11℃だったが、風が少し吹いているので体感気温はグッと下がる。
写真を撮っていると、ソリを引いて湖面へ出ようとした妻が緩やかな坂道でソリをひっくり返してしまったので、すぐに引
き起こす。油断は禁物である。
雪がほとんどない湖面は、スケートリンクのようにツルツルで、ソリを引くには非常に楽であるが、滑りすぎて歩きにくい
ほどだった。
駐車スペースの林の方向から昇り始めた朝日が美しく、雲がほとんどない青空と湖面の雪の青白さに挟まれた橙色が、見事なコントラストを広げている。
さっそく試し釣りをしてみることにしたが、寒さに負けた妻がテントの設営を迫るので、やむなく釣れる核心もないままにテントを広げることになった。
この時点で数匹のワカサギは釣っていたので、場所的に悪くはないだろうという判断もあったのだが・・・。
設営が完了して全ての準備が整ったところで、朝食の時間と
なってしまったので、腹が減っては戦はできぬということで、ワ
カサギ釣りの楽しみの一つでもある食事をして、ようやく暖かくなったテント内でくつろぎ、その後ようやく釣りはじめるこ
とにした。
しかし、ワカサギはポツポツとしか釣れない・・・。
そうこうしているうちに、ワカサギ遊魚料金の徴収に漁協のおばさんがやって来たので、他の釣り場の状況を聞いてみ
ると「あそこが今日は一番釣れていますよ」と教えてもらったが、すでに暖かなテント釣りの準備を完全に済ませていた
ので、もう少し様子をみることにした。
時々小さな群れが通り過ぎるだけのこの釣り場では次第に釣果が落ちる一方で、近くの人に聞いても同じような状況だ
った。
たまらず移動を決意して、荷物をまとめてからテントを先に移動、再び戻って一回で引越しは完了することができた。
新しい釣り場は試し釣りもせずに、漁協の情報を信じたものだった。さっそく仕掛けを下ろした妻が3匹いっぺんに釣り
上げたのを見て、やっぱりここは釣れるぞと戦闘開始!
 

多少ムラはあったが、先ほどの場所よりは釣れるようで、アワセを入れるとグッと重くなるその重さがワカサギとは思え
ないような重量感だ。軽く12cmを超える抱卵ワカサギが時々釣れるので、これぞ網走湖だと遠くまでやってきた苦労が
報われる。
大きなワカサギが複数匹釣れた時は、違う魚種が釣れたのではと思ってしまうほど心地良い。この日の最大は13cm丁度だったので、超ビックサイズは釣れなかったが、大きいワカサギのほとんどが抱卵だった。
しばらくすると妻が「変なの釣れたー、これトゲウオ?」見ると、そこには久しぶりに現れたトゲウオの姿があった。写真だけ撮ってから、すぐにリリース。
次は私に新たな魚種が釣れた!大きさは僅か5cmほどで、ヒレはあるのだろうが小さくて見あたらず、口は大きい。
全身に模様というよりも、成長過程なのか色がにじんできているようにも見える。リリースすると、しばらく水面に浮かん
でいたが、いつの間にか消えていた。
         
                何だろう?
この日は時間帯に関係なくヌマガレイも釣れていて、急にズンと思くなった時は間違いなくヌマガレイである。深さ3mほ
どの湖底からウネウネと引き上げる感触は独特な引き味で、これもここ網走湖の楽しみである。
天気のせいか、次々にやってくる釣り客は後を絶たず、テント外で釣っている人も随分と多い。
私達もストーブはいつの間にか消えたままになって、それでも寒くはないほど気温も上昇していたようである。
湖畔の林の中から時々聞こえてくる「ギャーギャー」という鳴き声が気になっていたので、近くで釣っていた地元の人に
聞いてみたところ「あれかい、ここは有名なところなんだよね。ほら、サギが鳴いてるんだ・・・」声の主は青サギだったよ
うで、朝からずうっと聞こえていた。
      

青サギの姿は見られなかったが、上空にはオジロワシがたくさん飛んでいて、氷上の釣り人から遠くないところにも降り
立っていた。
オジロワシは釣り人から10m以内という近距離でも逃げようとはせず、写真を撮ろうと近づいた人には後ずさりするだ
けで、飛び立ってしまうことはない。
         

私も近くまでそろりそろりと近づいて写真を撮ってみたが、近距離で見るとやはり迫力が違った。
空を飛んでいるのは鳥だけではなく、女満別空港が近いので飛行機もすぐ近くを着陸のために通過する。
飛行機は通過するときに大きなジェット音を一回、そして着陸するときにもう一回遠くから逆噴射音を響かせる。広い湖で釣りをしている姿と、低空飛行している飛行機が真っ青な空と妙に合っているように感じた。
お昼近くなると、ビニールハウス状態のテント内は昼食の準備のためのストーブの熱で暑いくらいに上昇し、開放しなければ居られないほどで、足元の氷も融けて水溜りができていた。
多くのテントが入口や窓を開け放して釣りをしているので、見知らぬ
近くの人たちとも話をするようになり、和気藹々とした午後の昼下がりといったのんびりした雰囲気だったが、肝心のワカサギが釣れなくなってきた。
時々釣れてくるカワガレイは足元の池で泳いでいてもらうことにして、反応の厳しいワカサギを狙うが、これがなかなかシビアである。
突然群れがやってきたかと思えば、数分で何処かへ移動してしまうらしく、すぐに反応は消えてポツポツとしか釣れなくなってしまう。
真剣に僅かなアタリも見逃さず釣れば、もう少し釣果は伸びるのかもしれないが、暖かな陽気に集中力は持続せずボーっとしてしまうのであった。
14時頃からはほとんど無反応となり、眠くなってきたという妻に促され、15時半には納竿することにした。
帰りがけに、羅臼から来ているという犬連れの方と話をしてい
ると、毎週のようにここへ来ているらしく、今までで今日が一番釣れないと話していた。
帰り道は写真を撮りながらゆっくりと走ったので、傾きかけた日が赤く染まり始めるほどで、もう少し遅く納竿していたならばもっと美しい夕陽が見られたかもしれなかった。
温泉街に入る途中の道で、ワカサギ釣りの道具を抱えた人が歩いていたので「乗っていきませんか?」と声をかけてみたところ、何と!釣り道具だと勝手に判断したものは犬だった・・・。
ただ単に散歩していただけだったので、気まずさを隠すために「いやー可愛いワンちゃんですねー」などとお世辞を言いながらその場を離れる。
夕陽の向こうから飛んできた白鳥の群れが湖上を通り過ぎたので、私達も家路を急ぐべくアクセルを踏んだ。





   ■ 朱鞠内湖(カラス島)

3月17日 4時の目覚しに少々気だるさはあったが、数分後には釣りへの期待から頭の中だけはスッキリしていた。
全道的に「晴れ」の予報どおり気温は低めのマイナス10℃、外に出た瞬間にピリピリするほど寒さを感じる。しかし、路
面はアスファルトが出ているので安心して運転できる。
比布から高速道路を利用するときには明るくなりかけていたが、和寒の前にある塩狩峠付近から靄(もや)が出始め、視界に影響するほどではないので幻想的な朝の一時といったところか。
士別市内のいつものコンビニで買物をして、朱鞠内方面へ向かう頃には靄は消えていて、木々が真っ白い化粧をされたように細やかな氷に覆われ、トヨタ自動車の試験コースがある温根別付近は特に美しい。
所々で雨竜川の上を通るが、川の流れは全く見えず、表面は凍り付いているのか白一色である。
朱鞠内小学校がある小さな集落は特に雪深い地帯なので、集落の外
れにある廃屋は積った雪の重さで今にも潰れそうに見えるが、意外に乾いた雪なので重くはないのだろうかなどと、考
えているうちに湖が近づいてきた。   

受付中の車が一台
6時過ぎに受付に着き、料金の支払いを済ませてから最近の情報を聞いてみると「最近は難しいんですよね・・・カラス島は朝だけしか釣れないし、弁天も釣れているとまでは言えない・・・ひょうたん沢は最近500匹以上釣った人がいるけど、その一回だけですからねえ。前浜も意外に最近でも釣れていますし・・・・・」と教えてくれたので、すっかり考え込んでしまうことになった。
管理棟の前で考え込んでいても仕方がないので、意を決してカラス島方面へ向かうことにした。
前浜からは少し離れたカラス島付近の駐車場は、時間も遅かったのですでにたくさんの車が停まっていて、ここまで来てようやく弁天南を
目指そうと決めたのであった。
ソリを引き始めると、ここ最近積ったのか道が悪くて下り坂にもかかわらずソリが重い・・・。
息を切らせて、ようやくカラス島周辺にたどり着いてみると、釣り人のテントが数張しかなくてとても静かだった。
弁天南は、ここからさらに2倍以上も歩かなければならず、体力的に無理だと判断してカラス島で釣ることにした。
周囲を見るといくつかの釣り場跡が残されていて、その中でもとてもきれいに使われていた場所があったので、さっそく
そこにテントを広げることにしたのは冷え込みが厳しかったせいだった。
試し釣りもせずに場所を決めるのは危険だが、最後となるであろうワカサギ釣りをのんびりと過ごそうと、妻との意見が
一致したためだった。
1cmほどの厚さの氷が張っている穴の一つをかかとで蹴って割り、妻の穴が一つ出来た。
他にも、すでに開いている穴はあったが、場所的に釣り難い穴だったので新しくあけることにして、ドリルを回してみた。
はじめは堅い氷の層があり、次にシャーベット層が固いところと柔らかいところが交互に続き、最後に固い20cm程度の
氷を抜けて水中に達した時には、ドリルを回せるギリギリの深さだった。
例年であれば延長ドリルを使わなければとても貫通できない深さだが、やはり積雪は少ないようである。まあ一応、延
長用ドリルの部品は持参してきていたが・・・。
深さはおよそ5m、手ばね竿では対応に厳しい深さだったので、リール竿にセットする。
仕掛けを下ろすとすぐに反応があり、8cmほどの先週とは違って小さく感じるワカサギが、時にはダブル、トリプルと釣
れ始めた。
      
                                               朝の釣り場風景
底ばかりかと思っていたタナも、仕掛けを下ろす途中で反応があったので表層から底まで探ってみたところが、表層で
も反応が良い。
妻が釣った中には一本の針に2匹が釣れることもあったので、魚影は濃いのかもしれない。
ところが、妻の仕掛けに地球がヒット!ではなくて木の枝のようなものが沈んでいるらしく、同じような状況で再び根掛か
りするので、新たな穴を開けることになった。
しかし、新しい穴も同じように反応は良く、何とか場所移動後も順調に釣れた。
底で釣るよりも表層で釣ったほうが手返しも反応も良いので、妻は一時、手ばね竿に変えて釣っていたほどだった。
もちろん釣れるのはワカサギばかりでなく、ウグイの姿も時々見られた。
ウグイは専用の生簀(いけす)を作って入れておくことにして、少し深めの生簀を用意した。

中央は弁天島
朝食を済ませた頃、近くにある管理棟からの放送はいつもの「スタンド・バイ・ミー」が流れ、釣り場における注意点や終
了時間、そば屋の営業時間などが案内された。
すでに日が昇っている頃なのに明るくならなかったので外の様子を覘いてみたところ、周囲は靄に覆われて遠くまでは
見渡せないほどだった。

ギンブナ
すぐ近くで親子連れの3人組が外で釣っている他は、テントがいくつか見えるだけで寒々としている。
時々、私達のテントのすぐ横を人が通っていく靴とソリの音が聞こえ、送迎用のスノーモービルは遠くを走っているのだろう、エンジン全開の音がする。
そんなのんびりしたワカサギ釣りを楽しんでいたが、朱鞠内湖の外道はウグイばかりではなかった。
底まで下ろしていた仕掛けにズン!と来た重いアタリ・・・引きも随分重々しくて、簡単には上がってこない。
糸を切られないように慎重にやり取りをしながらリールを巻いて、ようやく水面近くまで引き上げてきたときに見えた魚体にビックリ!何と!金色に輝くフナだったのである。
大きさは軽く20cmを超えていて、タモ代わりの氷すくいの網で持ち上げて全体の姿を見ることができた。
実は、このフナは「ギンブナ」というらしく、朱鞠内湖ではよく釣れる魚で、顔はウグイとさほど変わらず、大きな金色の
ウロコとその体高によって全く違うコイ科の魚だと判断できる。
「食べられるの?」妻が聞いてきたが、ギンブナは本州の一部に食べる習慣があるらしいが、北海道では現在その習
慣はほとんどないらしい。
ウグイの生簀に入れてみたところ、尻尾がはみ出してしまうのですぐにリリースする。
10時近くなってから、ようやく靄は晴れて日が射してくるとテント内は暖かくなり、テントを通して射しこむ日差しに頭が熱
くなるほどだった。
       
                                        中央がウグイの生簀、右下は根掛かり穴
釣果のほうもさほど落ちず、底が釣れなければ表層が釣れ、その反対もあったので適度に忙しい状態だった。
ウグイは小振りが多く、時には20cmほどのサイズも現れて少しだけ興奮させられるが、それは姿が見えるまでのこと
で、釣り上げた後は生簀行きが決まっていた。
この日もテント内ばかりか外も暖かく、釣りの合間に登ってみたカラス島の頂上から見える湖の眺めはなかなかのもの
だった。
しかし、雪深くて所々水が染みているので、散策には長靴は必要である。
私達のカラス島周辺の釣り場は、最近釣れていないと敬遠されているのか、この日の釣り客が偶然少ないのかは定かではないが、5
組ほどしか釣り人は居なかった。
ワカサギが日中も釣れていたのはこのせいもあったのか、食い渋りはあったものの魚のアタリが消えることはなかった。 
昼食後の暖かさから来る睡魔に「眠くなってきた」という妻を促して散歩を進めてみたところ、散歩にも竿を離さない妻
は他の穴でもワカサギを釣って帰ってきていたのは、この日の暖かさを象徴していた。
午後からでも表層で釣れることは珍しく、表層はウグイが釣れないので都合が良い。
まだまだ日が高かったが、15時過ぎには少しずつ片付け始めた頃、近くの親子連れが帰ってしまったので、私達も納
竿とする。
生簀のウグイを放流しようと穴を覗きこむと、シャーベット層が柔らかいせいか頭を突っ込んでいるウグイが多く、生簀
いつの間にか広くなっていたようだった。
テントのポールを片付けていたところ、カラス島の奥で釣っていたという人が現れて「今日は表層でも良く釣れたねえ。
こんなことは珍しいよ!」などと、釣果も良かったらしい。
やはり釣り人が少なくて静かだと釣果は上がるようだ。
      

朝方は歩き難かった道も、スノーモービルが何度も行き交ううちに固まって、道幅も広くなっていた。
管理棟のトイレに寄ったついでに「ワカサギ大物選手権」のプレートを見ると、この日現在の一位は11.9cmだったので、
昨年よりは小さいようだ。
朱鞠内の集落から大規模な除雪をしていて、これが終る頃には春がやってくるような、朝とは打って変わったアスファ
ルトが完全に出ている道を走り、士別市内に着いた。
市内で早めの夕食を食べてから買物をして、ショッピングセンターを出る頃には真っ暗になっていて、再び高速道路に
乗った。
高速道路の走行車線を示す緑色の光が眩しい位に明るくて、吹雪や霧の中でもこれなら見えそうだと思いながら、遠く
に見える街の灯りがやけにきれいに見えていた。

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